吉原と外/中島 要

吉原と外/中島 要

こんにちは、あいしゃです。

人はなぜ花魁に惹かれるのでしょうか?

映画や本で花魁(特に吉原)を題材にしたものがあると、ついつい手に取ってしまいます。GWはじめに読んだ吉原と外-なかとそと-は身請けをされた元花魁の物語。中(現役花魁)のソレとは少し違いますが、非常に痛快で面白い作品でした。

内容

Amazonより

元花魁と女中が二人暮らし。出るのは鬼か…。
気っ風と純情――江戸の女を描き尽くす著者新境地!
「あんたがお照で、あたしが美晴。何ともお似合いの二人じゃないか。」

お照は義父の卯平に命じられて、亀井町の妾宅で働いている。主人は卯平の奉公先である室町の呉服屋、砧屋喜三郎だ。
喜三郎は手代上がりの婿養子で、妻のお涼に頭が上がらない。そのため、吉原の花魁だった美晴を囲っていることは秘密である。通い番頭の卯平は喜三郎の兄貴分で、自分を引き上げてくれた弟分を守るべく、義理の娘に美晴の世話をさせることにしたのだ。
卯平は「美晴が男を連れ込んだら、すぐに教えろ」とも、お照に命じていた。それぞれが手前勝手な思惑を抱える中、美晴とお照の付き合いは思いがけず深まっていく……。

ざっくり説明すると、元花魁美晴(18歳)と行き遅れの女中お照(23歳)の友情物語。

美晴は幼い頃、実の父に母と吉原に売られます。容姿の良い母でしたが子持ちでとうのたった女。最下層の女郎として働き命を落とす。そして美晴は・・・。

吉原花魁テーマらしからぬライトな作品

吉原炎上、さくらん、花宵道中など花魁をテーマにした作品はどこか切ないものが多いのですが、この吉原と外は重さを感じない作品でした。

元花魁美晴の生い立ちは暗いものですし、今で言う毒親に奉公に出された女中お照も決して幸せな生い立ちとは言えません。

吉原の中で育った美晴と外で育ったお照。容姿はもちろん、考え方や行動パターンはまるで違うものですが、いつしか友情のようなものが芽生え、後半事件が起き妾邸から出て二人で暮らすシーンは

「色々あるけど、良かったね」

と温かい気持ちになりました。

人はなぜ花魁に惹かれるのか?

遊女を現代の職業に当てはめるなら風俗嬢。花魁はそのトップなので銀座のホステス、もしくは身体を売るから高級ソープ嬢でしょうか。吉原という場所を考えると後者のほうが適切か。

そのような職種を憧れとして描く作品はほぼないのに、なぜ花魁は現在でも題材になるのか。また、私のように惹かれる人間が多いのはなぜなのでしょうか。

華やかで浮世離れした外見

映像で見る花魁は皆、華やかで美しい。遊女の仕事を知ってか知らずか成人式に花魁スタイルという装いをする若者は毎年必ずいるし、七五三に子供にさせる親も。

当時花魁はファッションリーダーだったと読んだことがあります。キャバ嬢に憧れる人もいるように女性は豪華絢爛なものが好きなのです。

花魁は知性にあふれている

花魁が相手にするのはいわゆる勝ち組。彼らを手玉に取るためには美しく床上手なだけではいかなかったようです。本書にも花魁が手紙を各描写が何度も出てきます。読み書きができることが当たり前でなかった時代、花魁は手紙を書き、将棋をさし、唄をうたい、舞う。

才色兼備な花魁に惹かれるのは必然なのかもしれません。

複雑な男女関係

遊郭の中で暮らす花魁は、好きな人と結ばれることはほぼなかったと言います。遊女のトップクラスである花魁ですから、相手にするのは身元確かな相手だったでしょうが、ほとんどが父親ほど年の離れたエロオヤジ。当時は当たり前だったかも知れませんが、今のお金で何十万もかけて遊郭に通う男にろくな人間はいないと思われ。

そんな生活をしている花魁ですから、年の近い男性と恋に落ちるのは仕方ない。決して結ばれることのない花魁と青年の恋を描かれた作品は多くあります。

花魁をWikipediaで調べると高級娼婦、高級愛人と記載されています。花魁を取り巻く環境は過酷なものであったに違いないのですが、今もなお私たちの心を掴んで離さないのはこのような理由があるのではないでしょうか。

感想まとめ

悲しい生い立ちを持つ元花魁美晴とその女中お照。対象的な二人の生活に日々起こる事件を、美晴が鋭い洞察力とコネクションで解決していく痛快な物語。

二人の対象的なキャラクターが最高で続編を期待してしまいます。